宮内八幡宮
山宮浅間神社の付近に位置する八幡宮である。「宮内(みやうち)」の地名は、浅間大社の元つ宮である山宮浅間神社の「宮の内」——すなわち神域またはその近隣——であることを示すと考えられている。地名そのものが、この土地が古くから山宮の聖域の一部として意識されてきたことを物語る。
祭神は応神天皇(八幡大神)。富士宮市内の旧大宮郷周辺には、武士団の信仰を集めた八幡宮が点在し、中には源頼朝の富士の巻狩にちなんで曽我兄弟を合祀した「八幡曽我社」もある。建久四年(一一九三年)の巻狩は浅間大社の流鏑馬神事の起源ともなった出来事であり、八幡信仰と富士山信仰はこの地で武家の歴史を介して交差しているのである。
浅間大社の社家・公文富士家などの記録によれば、宮内八幡宮は、大宮から山宮へ神霊が里帰りする「山宮御神幸」の経路付近に位置する地区社として、大社の祭祀ネットワークに組み込まれていた。年に二度、神霊を乗せた鉾が大宮と山宮の間を往還するとき、この社の前の道もまた祭祀の道となった。
朱の鳥居をくぐると、赤い屋根の木造社殿が静かに立つ。観光客が訪れることはまれな小社だが、浅間信仰が深く根付いた大宮郷の宗教的景観は、こうした地区の氏神社が無数に支えてきた。大社と元つ宮を結ぶ祈りの道筋に、今も変わらず鎮座し続けている。






